episode61 最後の攻撃
あたりは静かになった。
さっきまで曇っていた空の雲の切れ間から光が差し込んだ。
青年は空を見上げていた。
帽子を深くかぶり大きな溜息を付いた。
"僕は一体これからどうすればいいんだ・・・"
町を見回してみる。
あちらこちらから火が上がっている。
戦争は止まったが負傷者、死亡者が数多く見受けられた。
「結局、何も守れなかったな・・・僕は」
自分の無力さを痛感した。
自分の故郷であるアールシティーを・・・守りきる事が出来なかった。
弟の光斗を救うことも出来なかった。
青年はゆっくり目を閉じた。
風が聞こえた気がした。
「隼人・・・!」
声がした。振り向いてみた。
そこには、僕が心から信頼出来る仲間が居た・・・
隼人「何か用か?」
真治「一旦、集まろう。みんなが待っている・・・」
隼人「ああ・・・」
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真治「皆、集まったか・・・?」
真治は皆の顔を眺める。
真治「誰も・・・死んでいないな・・・」
ゲンタ「重傷は負いましたけどね・・・」
真治「そうか・・・それはともかく・・・・・・本当に良かった・・・!!!」
零次「・・・・・」
真治「皆にいくつか・・・報告がある。聞いてくれ・・・」
全員が真治の話に耳を傾ける。
真治「とりあえず、知っている者もいるだろうが・・・d.gのメンバーは全滅した。」
蓮太「マジっすか・・・!」
栄太「・・・・・」
栄太は自分の双剣を見つめる。
火炎・・・
ザトシ「・・・・・・」
浩二「・・・・・」
零次「・・・・・」
真治「嬉しいくも悲しくもない・・・複雑な心情だろう・・・」
隼人「・・・・・」
真治「奴らは多くの命を殺した。当然の報いと言っていいことなのだろうが・・・」
エイト「・・・・・」
真治「ミステリオの罠だ・・今回も・・・今までも・・・」
ザトシ「くそ・・・」
真治「自分の部下を見殺しにしてまで・・・俺らを殺そうとした・・・
そういう奴なんだッ・・・!アイツは!!」
浩二「やっぱり・・・許せないよ・・・アイツのこと・・・」
ザトシ「そんな次元じゃねーよ・・・」
真治「皆聞いてくれ!!!ここでだが元d.gのメンバーの零次が・・・防衛軍に戻ってきてくれた・・・」
零次「・・・・・」
クリス「零次くん・・・」
隼人「貴様・・・どういうつもりだ・・・!?あぁ?」
零次「・・・・・」
隼人「散々仲間を傷つけておいて・・・今更ごめんなさいで戻ってくるのかッ!?貴様は!!」
隼人は零次を殴り飛ばす。
零次「殴るなら、殴ってくれ。俺は・・・許されるとは思っていない。許して欲しいとの思わない・・・。でも・・・」
浩二「隼人君!!!もういいんだッ!!!」
隼人「ですが・・・!!!」
浩二「僕が・・・説得したんだ・・・」
隼人「・・・・・」
浩二「確かに零次は悪いことをしたよ・・・でも彼を許してあげられないかな・・・?」
真治「俺からもお願いする」
ザトシ「・・・・・」
浩二「零次がああなってしまったのは・・・僕ら兄弟のせいでもあるんだ・・・」
栄太「・・・・・」
浩二「今すぐとは言わない・・・少しずつで良いから・・・零次を許してくれないか・・・?」
クリス「私は・・・いいよ・・・」
皆も頷く。
隼人も・・・しぶしぶ頷く。
クリス「おかえり・・・零次君・・・!」
零次「姉さん・・・」
真治「よし、話が一段落したところで・・・これから数日後にここを出発し万全な状態でミステリオ戦に望む。いいな?」
全員「コク・・・)頷く」
真治「じゃあ・・・各自・・・」
光斗「隼人ッ・・・!!まだ終わっていない・・・!!」
隼人「!?光斗!」
ボロボロで血塗れになっている光斗がよたよたと隼人の元へ来た。
隼人「まだ用があるのか・・・?貴様・・・」
光斗「ち、違うんだ・・・!!!!
ミステリオ様がこの町を爆破する装置をオンにした・・・!」
隼人「な、何っ・・・?!」
真治「それは本当か!?」
光斗「あぁ・・・遥か上空にある"核エネルギーレーザーシステム"が起動した・・・!」
浩二「その標準は・・・ここ・・・!」
隼人「それを止めるにはどうすればいい!?」
ザトシ「そいつごとぶっ壊せばいいんじゃねェか!?」
隼人「馬鹿か!それは遥か上空にあると言っただろ!!ヘリとかでもない限り無理だ!」
真治「どうすればいい!?」
零次「考えろ!!」
光斗「レーザーの発射時間は後、二分・・・でもレーザー持続時間は・・・5秒・・・!!!!」
真治「まさか・・・俺達がそのレーザーを五秒間食い止めろと・・・?」
梓「で、でもそれしか方法がないんですよね!?」
蓮太「やるしかないのか・・・」
隼人「・・・皆・・・すまない」
ザトシ「隼人らしくねーてんだ謝るなんてよwwもっと楽に行こうぜ!」
全員「ならお前一人で止めに行けよ、バーカ」
ザトシ「うぅうぅ・・・」
浩二「あと・・・30秒・・・どうやって止める!?」
真治「・・・真っ向勝負しかないだろう・・・!全員の力を合わせろ!!チームワーク見せろよ!お前ら!!」
ザトシ「そうこなくっちゃな!!」
そして三十秒後・・・遥か上空からアールシティーに向け光線がもの凄い勢いで飛んできた。
真治「あれか・・・」
零次「止めてやるぜ・・・!!」
隼人「光斗。やはりお前は許せない。僕の全てを壊し僕の過去を壊し・・・町まで壊そうとした。」
光斗「・・・・・」
隼人「でも最後は、この事を知らせに来てくれた。そんなことくらいで罪は償えないが・・・一応・・・感謝している・・・」
光斗「ヘッ・・・らしくねーぜ」
隼人「さぁ・・・止めるぞ!!!」
浩二「ダークフォース!!!第一奥義!闇砕き!!!」
真治「風神・風風剣!!」
隼人「エレキ・キックスロー!!」
ザトシ「エレッコリト・バースト!!!!」
零次「零刀・時空斬ッ!!!」
栄太「フレイム・イングダム!!」
蓮太「天地・匆匆!!」
ゲンタ「ウインド・ブレイカー!!」
八人のマジックが光線に直撃する。
浩二「ぐっ!!なんだこれ!!」
真治「五秒も耐えられんッ・・・!!」
光線の勢いは止まらない。
ザトシ「どうして!?どうして止まらない!!!」
ゲンタ「このままじゃ・・・アールシティーが・・・」
栄太「どうすれば!?」
隼人「光斗!!!どうすればいい!?」
光斗「・・・無理だ・・・もう・・・無理だ・・・」
浩二「諦めんな!!!ここで諦めたら・・・みんなが!!」
光斗「でも・・・・・!!!!」
真治「どうした!?」
光斗「僕の催眠術で・・・時空を捻じ曲げて・・・レーザー自体をなかったことにする・・・」
ザトシ「可能なのか・・・?そんなことが」
光斗「あぁ、理論上だがな・・・やはり僕にはこの町を破壊することなど出来なかったようだな・・・」
クリス「じゃお願いします!早く!」
光斗「時空を捻じ曲げた副作用で君らの頭の中に少しの間異常が起こるかもしれない。それでもいいか?」
真治「構わん」
光斗「よし、なら実行しよう・・・」
光斗は大きく息を吸い込むと・・・咆哮を天に向けて叫び全身に力を込めた。
すると時空が歪み始めレーザーがぐにゃりと曲がり始めた。
「どうか真相を・・・この戦争の・・・真相を・・・・・・暴いてください・・・・・それだけが俺の・・・・・・・望みです・・・・・」
正男ッ!!!!!
俺の目の前には正男が横たわっていた。
真相・・・!!!
まだ俺は真相の欠片にもたどり着けていない・・・
くそくそくそくそ!!!
!!!!
エレベーターに乗る自分とクリスとザトシと隼人。
エレベーターが閉まる。
正男はゆっくりと目を閉じた。
真治は正男に駆け寄って何度も名前を叫んだが、どうやら俺の声は聞こえないらしい。
そして研究所は大爆発した。
俺は爆発の中にいたが・・・
何故か正男の姿はもう無かった。
俺は泣いた。
何が救ってやるだ・・・
結局俺は何一つ・・・
本当の過去が正しいのなら、、
僕は一体誰なんだ?
何が何だかもうよく分からない。
弟とすり替わった僕。
そうだ。そうだったんだよ・・・
そう、あの時死んだのは本当に僕だったよ。
あそこからずっと頑張ったのは弟で・・・
ここにいるのも弟で・・・
僕の人生は偽りだった。
そう・・・僕はどこにもいなかったんだ。
後悔の念が積もる。
「取ったってどうせ渋柿じゃぞ?」
「それでもいいんだ!光斗に勝ちたいんだ!」
「なーにをー!」
僕達、兄弟は木の上で枝に付いてる渋柿に手を伸ばす。
「あともう少し!」
「負けないぞ!」
「・・・えいっ!」
「あっ!」
渋柿を取ったのは兄の方だった。
「やった!!光斗に勝った!!!」
弟よりも何もかも劣っていた兄はそんな些細な勝利でも嬉しかった。
やば!足滑った・・・!
僕は木から転落。
地面に尻餅をついてしまった。
父にこんなところを見られてしまった・・・
情けない。
そんな父は呆れて帰ってしまった。
「全く・・・渋柿ごときで何を・・・」
「すいません。。。」
「だが隼人もやるな・・・」
一番・・・聞きたかった言葉・・・
"僕を認めてくれた言葉・・・"
「お前の人生だって・・・本物だったはずだろぉ!!??」
浩二さん・・・
貴方は・・・僕を・・・認めてくれたのか・・・
僕は・・・なんて幸せ者なんだ。
僕の人生は・・・偽りなんかじゃなかったんだね。
本物で意味のある人生を僕は送れていたんだね・・・
良かった・・・
防衛軍の皆の顔が映る。
みんな・・・・・
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零次「レーザーが!!」
真治「き・・・消えた・・・」
クリス「・・・私達・・・勝ったのね!」
ザトシ「まぁな。でもコイツが・・・」
ザトシが指指す場所には・・・全身血塗れで倒れる光斗がいた。
ゲンタ「もの凄い無理をしたんだな・・・!」
隼人「光斗!!!」
光斗「隼人・・・・・」
隼人「今すぐ手当をしてやる・・・!死ぬな!」
光斗「ちょっと・・・無理かもしれないな・・・視界が霞んで来た・・・」
隼人「な・・・に・・・?」
光斗「隼人・・・
例え君が全てを忘れてしまっても・・・僕は何一つ忘れず---------」
隼人「あぁ・・・」
ザトシ「今なんて言った?」
隼人「なんでもいいだろうが・・・」
エイト「にしても・・・さっきの副作用とやら本当に気分悪くなりますねー」
真治「あ、あぁ・・・」
クリス「私も・・・」
隼人「・・・・・・」
ザトシ「・・・・・」
零次「そいつ死んだのか?」
隼人「あぁ・・・死んだ」
零次「・・・・・・良かったのか?」
隼人「・・・・・・」
真治「・・・とりあえず・・・俺達は体を休めよう・・・」
浩二「・・・その子はどうするの?」
隼人「埋めておきます・・・それから両親に会ってきます」
浩二「うん、そうした方がいいね・・・」
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そこから俺達は3日間、体を思いっきり休めた。
隼人は両親に会ってきて色々会話をしたらしい。
町の人達から感謝状が贈られ盛大な拍手を贈ってくれた。
そして遂に、出発のときが来た。
真治「みんな、準備はいいな?」
ザトシ「あぁ」
真治「これからミステリオランドへ行く・・・!」
全員の顔が引き締まる。
遂に奴のアジトへ・・・
真治「奴との戦いは今までより険しく残酷なものとなるだろう。覚悟はいいか?」
隼人「その為に一年間も準備してきたんだ・・・」
真治「よし、じゃあ・・・行くぞ!!!」
今、防衛軍の最後の戦いが幕を上げる・・・!
まだ罠が残っていることを知らずに・・・